Los Pinos: 華麗なる大統領官邸

 -  - 


ロス・ピノス【Los Pinosとして知られるメキシコの大統領官邸は、その資産価値はおよそ18億ペソと見積もられている大邸宅です。その面積は、土地全体として11万平方メートル、建造物だけでも5万6千平方メートルであり、あのアメリカの「ホワイトハウス」の14倍もの敷地面積を誇ります。その内部にはいくつもの豪華な居室や庭園があり、オリンピックプールゴルフ場、テニスコート、エレガントな多目的ルーム、ギャラリー、ボウリング場、ジム、映画館も設置されており、軍隊の駐屯所などがあります。

このロス・ピノスが建設される前、メキシコの歴代大統領とその家族は「チャプルテペック城」に居住するのが慣例でした。チャプルテペック城は1785年にヌエバ・エスパーニャ(メキシコの植民地時代)の副王領たちのための別荘として建設が始まり、現在では国立歴史博物館となっています。数世紀後の1872年にチャプルテペック城はメキシコの指導者たちの公式の邸宅に改装されました。メキシコの富と権力の象徴となったこの建築物に、のちのメキシコ大統領となるラザロ・カルデナスが1934年にチャプルテペック城が華美すぎると主張し、ロス・ピノスとして知られるようになった新しい公邸の建設を提案しました。それ以来、2018年12月1日まで、このロス・ピノスは13人のメキシコの大統領たちが居住していました。

ロス・ピノスが現在位置している土地は、1934年以前まではエル・モリノ・デル・レイとラ・オルミガという名前で知られていました。この場所はスペイン統治時代には穀物を挽くのに使用され、エル・モリノ・デル・レイ(臼の王)という名で知られていました。そして時代と共に土地の大部分が売却され、何度も持ち主が変わりました。その内のある裕福な地主が、自分の持つ最も小さい土地を「ラ・オルミガ(蟻)」と命名しました。メキシコの独立時代には、ラ・オルミガにエレガントな英国風の別荘が建てられました。そしてその邸宅たちとともにたくさんの木々が生い茂る厩舎、大きな池、たくさんの種類の木が生える庭園が整備されていったのです。

メキシコシティ―の幹線道路の一つであるパセオ・デ・ラ・レフォルマの建設により、ラ・オルミガは、チャプルテペック城と国立宮殿(メキシコ行政の本拠地、メキシコシティの中心地)の間に位置するところにあったので、時のベヌスティアノ・カランサ大統領の命令によりこの土地はメキシコ政府によって収用されました。そして、政治家の公邸と高級官吏の居住区になったのです。そして、時代の流れの中で居住者たちは、スイミングプール、ポロフィールド、射撃場、テニスコートや、軍事および政府イベントに使用される重要なホールなどを新たに建設し、改装を進めていき。例のラザロ・カルデナス大統領が1935年にこの場所に新しい大統領官邸とすることを決定し、故郷で妻と知り合った場所を思い起こし、この場所を「ロス・ピノス」と名付けました。

その後、1934年から2018年にかけて、ロス・ピノスに居住したメキシコの大統領たちは自分たちのニーズ、それぞれのライフスタイルに合わせて増改築を繰り返してきました。例えば、1934年には、英国風シャレーを改装し「ラザロ・カルデナス」と名付けられた大統領の邸宅部屋とするために改装プロジェクトが実行されました、そしてオフィスも作られ、「モリノ・デル・レイ」として知られる土地も付け加えられて、主要アクセス経路となる道路が建設されました。また、ミゲル・アレマン・バルデス大統領時代の1946年に、ロス・ピノスで急進的な再構築を試み、5千700平方メートルのフランス風の豪華な第2の大統領官邸を建設しました。邸宅内は、青銅、大理石、ガラスや磁器で装飾されています。新しい家の上部には家族のための部屋が並び、1階にはセレモニーホール、地下にはゲームホールがあります。 そして1952年、時のアドルフォ・ルイス・コルティネス大統領は、彼自身の名前のついた第3の、より簡素な住居の建設を命じました。

1934年から2018年までの14期の間に、ロス・ピノスに住むことを望まなかった大統領はアドルフォ・ロペス・マテオス(1958-1964)一人だけでした。彼は、外交使節などの宿舎とし、ミゲル・アレマン・バルデスの第2公邸を後の時代の大統領が居住できるよう改装させました。

その後のオーナーである大統領たちも、ロス・ピノスの内装も外装も含めた改築を進めていきました。2000年には、ヴィセンテ・フォックスが大統領となり6年間の統治を始めました。彼は、ラ・カサ・ミゲル・アレマン・バルデス(第2公邸)に住みながら、過剰なほど贅沢な装飾スタイルをもって、ロス・ピノスを大きく変えていきました。彼は、手始めに寝室やプライベートシアター、ボウリング場などのエンターテイメント施設、式典のためのホールなどを含めた内装を改築しました。そして、2012年から2018年のエンリケ・ペニャ・ニエト大統領の6年間には、ラ・カサ・ミゲル・アレマン・バルデスの建物上層部にさらに新たにマンションが建設され、大統領とその家族が居住したのです。

一方で、大統領官邸はこれまで、1970年から1976年までの6年間を除いてはほとんど公開されることのない、一般のメキシコ人にとっては閉ざされた場所でした。その6年間というのは、ルイス・エチェベリア大統領の任期の間で、人々は大統領がどんな暮らしをして、どんな仕事をしているか見ることができました。しかし、現在のメキシコ大統領、アンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール(2018-2024)は、既存の大統領官邸に住むことを拒否した二人目の大統領になりました。ラザロ・カルデナス大統領と同じように、公邸は華美すぎると主張しており、大統領選挙運動の時から、その場所に住むことはないと公言していました。2018年12月1日から、ロス・ピノスの1000平方メートルもの敷地は、美術館として一般のメキシコ人または外国人全てに公開されています。ロス・ピノスは、大統領の言葉を借りれば「芸術、文化、そして科学の魅力的な空間」となっています。

アンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール大統領は、現在もメキシコシティ南部の住居に住み続けており、将来的には国立宮殿の一部に居住空間を設けることを計画しています。

出典・参照

https://www.excelsior.com.mx/nacional/los-pinos-la-historia-del-poder-presidencial-en-mexico/1281798
http://archivo.eluniversal.com.mx/nacion/144821.html
https://www.admexico.mx/arquitectura/articulos/amlo-lopez-obrador-no-vivira-los-pinos/4393
https://www.excelsior.com.mx/nacional/los-pinos-el-poder-como-inquilino-se-acerca-el-fin-de-una-era/1277628
https://www.bbc.com/mundo/noticias-america-latina-46400667
bookmark icon