パステ:多彩なメキシコの食文化

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メキシコはご存知のように文化の多様性に富む国です。その中でも際立つのがメキシコ料理といえるでしょう。バリエーションの豊富さは印象的で、そしてそれぞれに代々受け継がれた伝統的な調理法で作られている料理は、UNESCOにより無形文化遺産に指定されています。

とはいっても、先祖伝来の伝統料理だけがメキシコ料理ではありません。そこは移民の国・メキシコ。年月を経てメキシコ料理のメニューに加わり、名物料理の地位にまで昇格した海外伝来ものもあります。その味の中には、もともとの生まれ故郷、そしてメキシコの歴史が秘められているのです。

イダルゴ州は、州史100年程度と、メキシコの中でも歴史の浅い州の一つですが、州内各地に様々な美食が受け継がれている土地です。イダルゴ州で楽しめるパステ(由来はコーンウォール語の “pasti”、英語の “pasty”から)は、鉱山が国有化された時代に英国料理からメキシコに根付き、レアル・デル・モンテ、ミネラ・デル・チコ、パチューカ・デ・ソトといった街の名物料理になりました。

そもそもパステは、イダルゴ州の各地に散らばる鉱山で働く男たちの空腹を満たさすためにもたらされたのが始まりです。鉱山の中で何時間も過ごさなければならなかった坑夫たちは、昼食時まで保温されるような弁当を作業所に持っていかなければならなかったのです。そんな環境の中でパステは鉱業が重要産業になった19世紀にイングランドのコーンウェルの技師たちによって持ち込まれました。

元来のパステは、パイ生地で作ったパンにジャガイモやミンチを詰めたもので、縁に三つ編み状の生地が付いていました。この三つ編みをつかんで食べるのですが、三つ編み自体は食べません。というのも、鉱山では手を洗えなかったからなのです。現在消費されるパステには非常に多くのバリエーションができていますが、英国式パステのオリジナルレシピを保存している地域もいくつかあります。

メキシコに伝来した他の食物と同様、パステはメキシコ人に受け入れられるように時代とともに変化を遂げました。現在では、それぞれの好みに合わせて詰め物のバリエーションも豊富になりました。モーレ・ベルデ、モーレ・ロホ、インゲン豆などの伝統的な名物料理から派生したものや、ひき肉、鶏肉とジャガイモ、チョリソーとチーズ、ソーセージ、ハムチーズといった惣菜系の詰め物から、ブラックベリー、アロス・コン・レチェ、パイナップル、アップル・シナモン、グアバなどのスイーツ系の詰め物まで色々あります。

パステはイダルゴの鉱業地帯の重要な料理となっていきました。現在、イダルゴ州のレアル・デル・モンテには、パステの料理遺産普及を目指す団体によるパステ博物館があり、鉱業やフットボールと共に伝来したパステの歴史を知ることができます。同博物館では、パステの手作りも体験できます。

【参考文献】

http://museodelpaste.com/
http://pastesrealdeplateros.mx/home/?page_id=41
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