新世代のメキシコ映画 進化する先に映し出されるものとは

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1980年代の終わりから90年代の初頭、IMCINE(メキシコ映画技公社)の設立と共にメキシコにおける映画ブームが高まりをみせました。ホルヘ・フォンス監督の『ROJO AMANECER』、アルフォンソ・アラウ監督の『AGUA PARA CHOCOLATE(邦題:赤い薔薇ソースの伝説)』、ルイス・エストラダ監督の『La ley de Herodes』などは新世代のメキシコ映画として知られています。これらの映画界の変化は国内に留まらず、海外にも波及しました。そして次に挙げる4人の映画監督は、まさしくその「波」を作った監督たちと言えるでしょう。

ギレルモ・デル・トロ監督は素晴らしく、かつ愛着のあるホラーファンタジースタイルで、メキシコ最大の映画賞であるアリエル賞、アメリカのアカデミー賞を受賞し、イギリスのアカデミー賞やヴェネツィア映画祭などの国際的に名高い映画祭でも頻繁に作品がノミネートされ、世界的に知られています。彼の作品には『クロノス』、『パンズ・ラビリンス』、『ヘルボーイ』、そして彼の最新作『シェイブ・オブ・ウォーター』では、第90回アカデミー賞の監督賞を受賞しました。

「新世代」の一員と呼ぶには失礼かもしれませんが、アマト・エスカランテ監督も、その作品『よそ者』、『エリ』、『触手』でカンヌ国際映画祭やベルリン国際映画祭にて高い評価を得て世界的に脚光を浴びた一人です。それらの映画の中で、メキシコに深刻な影響を与える麻薬密売や移民の問題を扱っていますが、その扱い方は不思議と美しさがあります。


映画評論家の多くは、2000年の作品、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の『アモーレス・ペロス』が、メキシコ映画界を救ったと言っています。この作品は、人間が持つ不条理さを3つのストーリーを同時に展開させることで表現し、その完成度の高さから東京国際映画祭でグランプリを受賞しています。そして2014年の作品『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』で、メキシコ人として25年ぶりに監督賞のオスカー像を手にし、それをはじめとするアカデミー賞4部門の栄冠に輝きました。次の年の作品『レヴェナント:蘇えりし者』でも2年連続で監督賞を受賞するなど、今やメキシコ映画界最高の逸材の一人と評されています。

映画監督を母に持つアルフォンソ・キュアロン監督は、『ハリポッターとアズカバンの囚人』の大成功で国際的な知名度を築きました。そしてメキシコ映画界に「メキシコ・クラシック」という新しいスタイルをもたらします。彼の最新作『ROMA/ローマ』は、現代メキシコ映画界で一番ホットな作品として扱われるほど話題を呼んでいます。自伝的な内容のこの作品は、メキシコシティのローマ地区に住む、中流階級の家族に焦点が当てられ、登場人物の家政婦クレオを中心に家族以上の柱に変わっていく様子が描かれています。知的で複雑な内容になっていると同時に、繊細でありのままが描かれ、映画評論家のニコラス・ルイス氏は「家族主義や現代メキシコの現実の描写に対する階級差別批判よりも向こう側を見ることができる何かがある」と述べています。

加えて、この映画が話題になったことにより、国内最大の映画配給会社で上映されていないことや宣伝等を「la Cineteca Nacional de México」のようなミニシアターや文化団体が担っていることが注目され、メキシコ映画界が直面している国内作品の配給と普及という課題にも目が向けられるものとなりました。

私たちは芸術と文化の発展と創作を促進する方法を探しています。その取り組みにより、様々な分野での制作資金が提供されることを期待しています。読者の皆さん、メキシコ映画を共に前進させましょう。国際言語とも言える、そして私たちの共同体を知る機会である「映画」に更なる関心を持っていただき、お互いの理解をもっと深めていきましょう。

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