未来へのイノベーションとは 食品における革新的挑戦を追う

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ホセ・ルイス・ロハス・アルダナ

世界にはグローバル化の波が押し寄せて競争力が高まり、そして求められるものもより厳しくなっています。そのような世界に適応するには、素早く、的確に最先端の技術を受け入れることが重要です。イノベーションは、経済的、技術的、または社会的にかかわらず、国の成長に不可欠な役割を果たしているのです。

毎年、OMPI(世界知的所有権機関―英語略WIPO)とコーネル大学、INSEAD(フランス系のビジネススクール・経営大学院)が専門家らと合同で「世界イノベーション指数」というものを発表しています。この指数は、126の国や地域を対象にイノベーションの能力や成果の統計データ、独自の調査結果等に基づいて評価し、そこから導き出された2つの指数を平均化して算出します。その2つとはイノベーションのために使われた資源の指数とイノベーションの結果の指数です。2018年版によるとメキシコは56番目で、ラテンアメリカ・カリブ地域では3番目でした。

メキシコで「イノベーション」と言えば、継続的な経済発展を達成するために新しい商品、デザイン、プロセス、サービスの創出を目指して、新しい需要、消費者ニーズ、市場機会、そして新しいビジネスモデルなどを探ることを主に意味します。その例として、ダニエル・ハコボ・ヴェラスケス氏【Daniel Jacobo Velázquez】が挙げられるでしょう。

彼は2012年にel Premio Nacional en Ciencia y Tecnología de Alimentos(全国食品科学技術賞)を受賞したほか、Technology Review誌で食品分野での功績が認められ「35歳以下の若手イノベーター10人」に選出されています。ダニエル氏にとってイノベーションとは、社会にサービスを提供する多くのアイデアが連なる結果として、科学的知識が商品という形に変換されることだと答えています。

「私たちメキシコ人は非常にクリエイティブです。(それを活かして)雇用を生み出し、経済発展に貢献すると供に、国の様々な環境に利益を与えるためにイノベーションを起こすことが重要なのです。」

ダニエル氏によると、毎年およそ3万3700トンものニンジンなどの野菜が、人が食せる品質基準を満たしておらず、結果的に有機肥料になるとのことです。彼はDepartamento de Biotecnología e Ingeniería de los Alimentos del Tecnológico de Monterrey(モンテレイ食品技術生物工学エンジニア局)と共同で、この「不完全」なニンジンを化学工場で代謝を活性化させ、栄養価を高めた医療用にも使える粉末状の生体物質に作り変えたのです。このアイデアで今まで家畜の飼料や堆肥に回っていた不完全な野菜や果物が再評価されることとなりました。

「2007年から11年間、研究を行っています。2010年からはこのアイデアの実用化が始まりました。この技術と方法は私たちが開発したものですが、プロセスで使っている技術は業界に元来あったもので、それらを私たちは自分たちの製品を作るために応用したのです」とダニエル氏は話します。

彼のチームは実際にレタス、黒インゲン豆、ぶどう、にんじん、ジャガイモ、ブロッコリーなどからシキミ酸やレスベラトロール、サポニンといった抗がん剤物質を、ブロッコリーからはそれに含まれるグルコシノレート、レタスなどからは同じく含まれるアントシアニンなどの抗酸化物質、ジャガイモなどに含まれている肥満や糖尿病の予防になるクロロゲン酸の抽出を行っています。

これらの生体物質は通常、化学調合や遺伝子操作などによって生産されています。しかし、このアイデアで生産されたものは、技術面から見ても従来品より安価でかつ単純な方法で生産され、また、世界中で遺伝子組み換え関係に適用されている法律や規制に触れることはありません。そして品質について彼は「生産されたものを専門家に送ることで常に(品質が)保証され、それから人が吸収できる形に加工されます。現在、5社からニンジンやブロッコリーといったものから商品を開発する協力の申し入れが来ています」と述べています。

ダニエル氏は2012年10月にCONACYT(科学技術審議会)から全国食品科学技術賞を受賞し、同年のモンテレイ工科大学の最高賞である「ロムロ・ガルサ賞」を受賞しています。その他の実績としてサイエンス・サイテーション・インデックスで23の論文を、そして2冊の著書を発刊し、加えて2つの博士論文と4つの修士論文を監修し、既に審査には通っているということです。

「CONACYTとは戦略的連携と政府資金の援助の道を開けてくれました。その結果、製品開発が大きく進み、メキシコで一番の食品会社に(生体物質の製品を)提供することができたのです。そして2019年には、食品の分野で国際的に活躍する複数の企業と一緒に子供たち向けの野菜入りソーセージを、商品として初めて全国レベル展開で販売します。メキシコのパン業界で最大の会社とも一緒に仕事をする予定です。私たちの製品を使ったパンの販売が始まります。」

彼は現在、Escuela de Ingeniería y Ciencias del Tecnológico de Monterrey(モントレイ工科大学、科学・エンジニアスクール)の研究員として、そして教授として教鞭をとりながら、新しい形のイノベーションを起こすべく奮闘しています。

「食品のイノベーションは全ての社会の土壌です。皆、毎日ごはんを食べますから。そういう意味からしても、とても有益で興味深いテーマだと思います、多くの企業がイノベーションを起こすためのね。」

そして最後に、未来のメキシコを見据えた彼なりのビジョンも語ってくれました。

「実用的でインテリジェンスな食品とは、健康を改善して生活の品質を上げるのに役立つ栄養素が含まれる食品のことを指します。これから10年間、多くのメキシコ人にインテリジェンスな食べ物を学んでもらい、私たちの製品を使ったものが食卓に並べられ、家族みんなで食事を楽しむ。近い将来にそんな光景が見られればと思っています。」

<参照・参考>

・CONACYT – https://www.conacyt.gob.mx/index.php/el-conacyt/desarrollo-tecnologico-e-innovacion

・IMCO – https://imco.org.mx/temas/indice-mundial-innovacion-2018-via-ompi/

・OMPI – http://www.wipo.int/publications/es/details.jsp?id=4330

・CRONICA – http://www.cronicajalisco.com/notas/2017/75939.html

・CRONICA – http://www.cronica.com.mx/notas/2017/1007677.html

・Loop – https://loop.frontiersin.org/people/234195/bio

・Interempresas – https://www.interempresas.net/Horticola/Articulos/208571-Uso-alterno-de-cultivos-hortofruticolas-como-biofabricas-de-compuestos-nutraceuticos.html

・Residuos profesional – https://www.residuosprofesional.com/transforman-residuos-vegetales-en-compuestos-quimicos-de-alto-valor/

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