ルイス・ロングの建築 今も生き続ける賢人のデザイン

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ベロニカ・プラソラ

時は19世紀。ひ とりの男がイギ リスからメキシ コに着ました。その男は建築家、 設計士、天文学者、時計職人、そ して今で言う環境デザイナーなど 様々な顔を持っていました。この 教養溢れる男は文才も長けてお り、旅行先や滞在先で書かれた秀 逸な文章が現在も残っています。

彼の名はルイス・ロング。 彼の手によって生み出されたメキ シコのいくつかの街にある、宗教 的なものからその他分野におけ る建築物は、今でも貴重な財産と して見ることができます。その中 でも最も豪華な建築物のひとつ として挙げられるが、グアナファト 立法宮殿【el Palacio Legislativo de Guanajuato】です。

この宮殿 は現在に至るまでその機能を果 たしており、彼の代表作と言える でしょう。 ルイス・ロングは安住の地として 腰を据えたレオン市で、排水や街 を流れる河川整備や大聖堂の時 計の設置など、町の基盤整備に 大きく関わり、ハルパ農園ではダ ム、水力式の水門や橋の他に、農 場主のためゴシック様式の礼拝堂 まで建築しました。そしてレオン 市において彼が成し遂げた多くの 業績は、当時1888年に起こった大 洪水から復興を遂げるという意 味で、後世に大きな意味を持つも のとなりました。

また、遠方で直 接対応できない顧客には、設計・ 建築のアドバイスを積極的に行 い、各地に影響を与えました。 おわかりの通り、ここでロングの 功績をひとつひとつ簡単にでも紹 介すると、とても長くなりますの で、それよりも彼の特徴的なスタ イルをご紹介したいと思います。

一つ目の特徴は、彼が携わったプロジェクトの多くには、当時のメ キシコには珍しい欧米の最先端 であった鋼材とガラスを多用する 技術が採用されていました。アン ダルシアの商人のために建設した セラヤにある倉庫は、鋼材を骨組 みにしたデザインで、その特徴が わかりやすく捉えられます。

二つ目に、これらのスタイルの採 用は、単に流行や最先端技術の 活用だけを目的としたものではな く、建築物の有用性を掘り下げて 考え出されたものだと理解でき ます。このことは、おそらく同じイ ギリス出身の思想家、ジョン・ラ スキンの影響を受けていたことが 推察され、ラスキンの著作「建築 の七灯」の中では、人が生み出す 建築には、自然(神、生命、信仰な ど)が必ず存在し、そこに一貫性 を見い出すべきだと主張されてお り、彼の建築物にはそのような配 慮のあるデザインが施され、その 特徴を活かすかように鋼材やガ ラスなどが使用されています。

ま た、疑いないことに、ゴシック建 築の合理的解釈を広げ、資材とし て鉄などの利用を認めたフランス の建築家、ヴィオレ・ル・デュクの 作品をロングが読んでいたことか らも同様な推察ができます。これ はロングの蔵書の中に彼の著作 があったことから明らかです。

三つ目に、本質的な都市基盤整備 や都市景観が考慮されていたこと です。これは建築物を単一的、ま たは孤立的に捉えるのではなく、 都市の中心に並ぶ建築物は都市 の発展を左右するという総合的 な視野から設計されていたことで わかります。その証拠にグアナフ ァト立法宮殿のように、彼が設計 した通りや建築物の多くは、今で もビジネスや文化の中心街として 生き続けています。 建築や都市のデザインに影響を 与えただけではありません。

彼は歴史的建築物に関する仕事に携 わっていた際、スペイン侵略当時 の特徴ある残像物を発見し、そこ から保護や文化的分類作業を行 い始め、メキシコにおける歴史的 建築遺産の分類と保護という業 績も残しました。

では、彼の芸術に対する美への アプローチはどういうものなので しょうか。彼のフォーマルな作品 群からは、スイスのル・ロックル で学び、その後メキシコの「ラ・エ スメラーダ」で培った職人たる感 性が、その正確さを際立たせてお り、ロマネスク、ゴシック、ベネチ アンルネサンス、マニエリスム、モ サラベ、新古典主義などのスタイ ルや構成要素を学ぶ上で、真のカ タログとして評されるほど現代で も多くの高い評価を受けていま す。

彼の美を丁寧にひとつひとつ 言葉で伝えるよりは、直接肌で感 じていただいた方がよろしいでし ょう。その特徴をひとえに感じら れる場所を最後にご紹介します。 それはある司教の墓でもある小 聖堂です。この小聖堂はモサラベ 芸術の表現豊かなスキームに基 づき、そのフォーマルな明快さに よって高い評価を受けています。

とても緻密な設計がなされてお り、中に入るとまるでダイアモンド が一面に張り巡らされているよう な眩さですが、それでいながら宗 教的建築物として節度のある雰 囲気が体験できます。この賢人の 熟練した建築技術によって作られ たこの小聖堂は、私たちの胸に静 けさと美しさ、そして調和をもたら してくれることでしょう。

この小聖堂「Capilla del Señor san José」は、レオン市のカトリッ ク宗教の中心であるカテドラルに あり、指定された時間帯にて一般 公開されていますので、ぜひ一度 お立ち寄りください

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