ワン・トゥー・スリー フォール!! メキシコの子どもの憧れ ルチャ・リブレ

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マルコス・ジャマス

大抵のメキシコ 人は子供の頃、 空き地で、家で、学校でプロレス ごっごをしたものです。スーパー ヒーローのようなレスラーは筋骨 隆々で格好良く、そんな姿にワク ワクしました。

時が経ち、スポー ツアリーナへと足を運ぶと、今度 はマスク、マント、レスラーのフィ ギュアに、そして中央の、木で作ら れた四角いリングと。目にするも のどれもこれもに興奮しました。艶やかなマスクを身にまとったヒーローの彼らは、リングでコウモ リやモンスターにミイラ、狼男、マ ッド・サイエンティスト、外国人な ど、敵やヒール(悪役のこと)をそ の華麗な姿と技で倒し、時間なん か忘れさせるくらい見る者を熱中 させます。

そんなマスクを被った 彼らの素顔は見ることはできませ ん。そこにはヒーローとしてのアイ デンティティーが見え隠れし、そこ にファンは惹かれるので す。そう、素顔はミステリ ーなのです。メキシカンレスラーの特徴は、重 厚かつ高度なレベルで世界中の 文化をマスクや衣装に目にも鮮や かに表現し、ドレスアップしている ところです。そんなマスクや衣装 で戦うレスラーはミステリアスな 雰囲気を醸し出し、それがまた人 気に拍車をかけています。貧困、アルコール、ドラッグ、家庭内暴力、児童虐待、飢餓、こんな 現実から救ってくれるパラレルワ ールドがリング内外で繰り広げら れ、子供や若者は、その世界を夢 見て、リングへと向かいます。

た だ、プロレスラーになることは、そ う容易いことではなく、たとえな れたとしても、それはとてもハー ドワークです。プロレスのことを、ここで は「ルチャリブレ」と言 い、レスラーたちはルチ ャリブレに喜びと愛を捧げます。ただ、伝説のレスラーとし て、または真のレスラーの血を引 き継ぐ者として活躍できるのは、 ほんの一握りです。エル・サント、ブルー・デーモン、 ミル・マスカラス、ブラック・シャ ドー、ムルシエラゴ・ベラスケス、 ラヨ・デ・ハリスコ、カベルナリ オ、ガリンドなどたくさんのレスラ ーたちがルチャリブレの歴史を築 いてきました。彼らは、それは伝 説で、それは芸術級なレスラーで、 そんな彼らが格闘する姿をChano Urutea、Rene Cardona、Benito Alazraki、Federico Curiel、Jose Builらプロデューサーたちが大画 面に映し出し、ルチャリブレはと りわけ金を産む、フィルムの王様 と言われたものです。

打撃、出血、怪我が現実のもので あり、誰もが容易くリングに上が れないと信じ、そんなロマンや純 粋を強調する価値は、ファンによ って作られています。暴力と狂気、 そんなテクニシャン同士の格闘 は、常にファンを喜ばせます。

ただ、川の流れのように、レスラ ーもやがて年を取り、日々過酷な 試合で受けた傷によって余儀なく 引退をすることがあります。もちろ ん癒える傷もあります。しかし、 人生において残された時間を考 えた時、家族と向き合う、そんな 時間も大切です。

最近、ペロ・アグヤロ・ジュニアは レイ・ミステリオとの試合中に命 を落としました。レスラーは、ルチ ャリブレは、実直と鍛錬、そして 強さだけを携えて、いつも危険極 まりないリング際に立って、日々 格闘を繰り返しているのです。

現在、新しい感覚を持ったレスラ ーとファンが存在しています。ル チャリブレは、チョーク・ホールド (首を絞める、プロレスでは古く から使われている反則技)などと は逆に、コーナーやトップロープ などを使う、見た目に派手で危険 な空中殺法中心の進化を遂げて います。リングの上でレスラーがじ っくり組み合って格闘する、そん な戦いは少しずつ無くなってきた ように思えます。

ただ、そんな時代のなか、リングの 上で格闘する、クラシックスタイ ルにこだわったレスラーたちもい ます。エル・イホ・デル・サント、ブ ルー・デーモン・ジュニアなどは、 ルチャリブレの、また彼らの父た ちが築いた伝説を引き継ぐかの ように、今も変わらずリングの上 で組み合い、ファンを熱狂させて います。   もし生まれ変わったら、そうです ね、レスラーになりたいです。レフ リーの「ワン・トゥー・スリー」のカ ウントを聞きながら、永遠のレス ラーにね。

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