NAFTA改正を前にメキシコが目指すべき4つの提案

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ウンベルト・ゴメス

 

メキシコは23年もの間、商業的で生産性があり、そして投資性の高い関係を北の隣国と深く築いてきました。この関係は私たちのマキドーラの工場や農産業に対して重要な役割を担っています。メキシコのみならずアメリカやカナダにも、この巨大な経済ブロックは十分なほど恩恵を与えました。我々北米3カ国は恩恵を享受してきたのです。しかし、1992年にカルロス・サリナス大統領が締結したこの協定に今、改正の手が施されていることはご周知の通りです。

 

田舎で働いていようが特殊な技術者であろうが、日々多くの労働者たちがこの北米地域のNAFTAという経済ブロックに依存していることは間違いありません。今回のNAFTAの大幅改正は、自由貿易という価値観や地域統合の概念、そして何よりも3つの地域の何万人もの人たちの職を危険に晒す可能性があります。こういった危険を何としても回避しなければいけません。15世紀の資本主義者が考えるような「お金を得ること自体が目的」になることは見方次第では時代遅れで、隣国の大統領が行おうしていることは一方的な押し付けに過ぎないのです。

 

更にアメリカは数週間前、安全保障上の理由に鉄鋼などの輸入品に関税を課すと発表しました。メキシコもカナダもその報復として、アメリカからの輸入品の一部に関税を課すことを決めています。この貿易戦争には目に余るものがあり、全ての戦争に言えることですが、今回の目的も一部の者が富と権力だけを欲するものであり、最終的に被害を受けるのは私たち一般市民なのです。

 

保護主義政策の大きな風が吹き荒むなか、メキシコはグローバル経済における4つの中心的な軸となる強化策を立てています。自由貿易で得た恩恵を私たちの社会に還元し、北部のアメリカを単なる巨大で野心的な協定相手だと捉えるのではなく、参加する全ての国の利益になるような競争力のある地域へと考えをシフトさせようとしているのです。これを実現させるために、メキシコでは昨年2月1日から7月26日まで調査を行い、この協定に対する意見や提案をまとめ、CCENI(国際交渉戦略諮問委員会)を通じて、この国の製造業との協議を今も続けています。そして以下のような提言をまとめていました。

 

1.北アメリカの競争力を強化する

 

現実的な発展方法を考えながら、この地域の永続的な競争力やNAFTAの価値を広めていき、ロジスティクスを改善するなど商業交流を促進させるスキームを開発する。これを達成するために以下のことが必要である。

 

  • メキシコ人投資家にとって国際的なスタンダードに準じた確実性のある差別のない協定であり続けること。
  • 現在メキシコでは、短期滞在ビザを「観光」と「商業」目的でしか与えていない。諸外国の人がメキシコに入国しやすいようにビザの種類を増やし、ビザ発行までの時間を早め、そのプロセスの透明性を図り、より移動しやすいようなメカニズムを構築すること。
  • 労働者が市場の新しいニーズに応えられるように、競走力を高めるプログラム開発を行い、それに伴い新しい教育モデルを構築・促進できる地域協力のメカニズムを強化すること。

 

2.包括的で責任感のある地域経済へ

 

NAFTAの改正は、多くの起業家や中小企業を同等の条件で競争力のある国際的なビジネス環境に参入できるように組み込み、そして労働や環境、性別にもに憂慮した規定を定めて分け隔てないものにしていく。そのためには以下のことが必要である。

 

  • 国内ルールや国際的な合意事項が達成できるように促すこと。
  • 商業や環境などの規定について、NAFTA加盟国の間で比較や討論を活発化させる。また、国境のインフラを改善する。
  • 協定を結ぶ際にジェンダーの視点からの改善を盛り込むこと。

 

3.21世紀型経済を活用すること

 

今世紀には新しい技術開発があり、エネルギーにおける展望はNAFTAが発効された1994年とは違ったものになっている。現在、シェールガスやオイルサンドといった資源が手に入ることもあり、また、メキシコのエネルギー産業が開放されたこともあって投資や協力が相次いでおり、北アメリカのエネルギー産業の統合や安定性が強化している。エレクトロニクス産業やデジタル産業を起爆剤とし、電子決算システムの導入などで経済のデジタル化を推進させて第四次産業革命へと導く。知的財産権を保護するために地域連携のフレームワークを強化していくことは、協定や投資の機会を増やす必要事項である。これを達成するために以下のことが必要である。

 

  • エネルギーに関するルール作りを徹底すること
  • デジタル経済やエレクトロニクス産業、エレクトロニクスに関係する経済サービスの開発を促進すること。
  • メキシコの金融サービスのプロバイダーや投資家が、アメリカやカナダの市場によりアクセスしやすい環境を構築すること。
  • 3カ国の電気通信市場を統合すること。

 

4.北アメリカでの商業や投資の確実性を促進する

 

この20年間培ってきた論争解決のメカニズムは、この地域の商業の確実性を促すツールとして十分機能することを証明した。これからも発展させていくために以下のことが必要である。

 

  • より迅速に、透明性のある、確実性が増す解決メカニズムをモデル化すること。特に投資家対国家や国家対国家などのアンチダンピングや関税の補填に関するもの、金融サービスに係わるものなどに重点を置く。
  • 市場の有効性や消費者の権利の保護を維持するために自由な競争を促し、NAFTA加盟国の当局者同士の情報共有や協力態勢を改善すること。
  • 北アメリカとの手続きに関して、メキシコのサプライヤーに法的確実性を担保をすること。

 

グアハルド経済大臣は、NAFTA再交渉というこの難しい交渉が今年中に締結する確率を50%に下げました。これは改正の締結が次の大統領にバトンタッチすることを意味しています。この記事を書いている現在では、ロペス・オブラドール氏の当選が確実視されています。彼は保護主義政策や国内産業に重点を置くことを公約に掲げています。また、農業では生産を国内自給のみにすると公言しており、メキシコや海外の投資家たちが今後、メキシコの国際貿易についてどのような判断を下すのか苦慮されています。しかし、彼はWTO(世界貿易機関)の元アシスタントディレクターでIMF(国際通貨基金)の元メンバーであるヘスス・シーデ・クリ氏をNAFTA再交渉の代表に選びました。クリ氏は、原産地規制や紛争の解決方法について対立候補のリカルド・アナヤ氏やホセ・アントニオ・ミード氏と同じ考えを持つ人物なのです。

 

NAFTAの再交渉の必要性が差し迫っていますが、おそらく交渉は来年まで持ち越されるでしょう。メキシコは現政権内の経験あるチームで対応しており、今後の交渉の軸となるような礎を築いています。新しいNAFTAはメキシコだけでなく、その他2つの国で利益を享受する全ての人たちにとって、安心できるものにならなければなりません。どこかの国の大統領がどうであれ、3カ国は同じ方向を向かなければならないのです。

 

<出典>

 

・STAFF. (2018). TLCAN 2.0 se paralizará hasta que México elija nuevo presidente. 11 junio 2018, de DEBATE Sitio web: https://www.debate.com.mx/politica/paralizan-tratado-libre-comercio-mexico-mientras-eligen-presidente-20180610-0113.html

・STAFF. (2018). Prioridades de México en las negociaciones para la modernización del TLCAN. 11 junio 2018, de Gobierno de Mexico Sitio web: https://www.gob.mx/se/articulos/prioridades-de-mexico-en-las-negociaciones-para-la-modernizacion-del-tratado-de-libre-comercio-de-america-del-norte?idiom=es

・Susana Guzman. (2018). Anaya coincide con empresarios en temas de aranceles y TLCAN. 11 junio 2018, de El Financiero Sitio web: http://www.elfinanciero.com.mx/elecciones-2018/anaya-coincide-con-empresarios-en-tema-de-aranceles-y-renegociacion-del-tlcan

・Daniel Blanco. (2018). Que proponen los presidenciables sobre el TLCAN. 11 junio 2018, de El Financiero Sitio web: http://www.elfinanciero.com.mx/economia/que-proponen-los-presidenciables-sobre-el-tlcan

・Daniel Blanco. (2018). ¿Qué piensa el negociador de AMLO en TLCAN sobre el acuerdo?. 11 junio 2018, de El Financiero Sitio web: http://www.elfinanciero.com.mx/economia/que-piensa-el-negociador-de-amlo-en-tlcan-sobre-el-acuerdo

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