Mexico新聞カルチャークラス第1回:「夏の病気とワクチン接種」

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     榎本 陽介

 

Mexico新聞で は、在墨の日本人女性に向けて、メキシコの社 会や文化、歴史、ライフスタイルなどを紹介する「カルチャークラス」 を6月からスタートしました。(毎 月1回、第三水曜日開催)。 その記念すべき1回目(6月20日) のクラスのテーマは、「夏の病気と ワクチン接種」について。 本格的な夏の到来を控えて、心配 されるのが蚊を媒介して広がるデ ング熱、ジカ熱、チクング二ヤ熱な どの伝染病。あまり、日本では一 般的ではないこれらの疾患に関し て、グアナファト州保健省で予防 推進に携わるファティマ・メルコー ル・マルケス医師とアルマ・ヒメネ ス医師が登壇し、概要や症状、予 防法ついて説明しました。

〇3種類のウイルスを同時に持つ 蚊も存在

この3種類の病気は、全ての人が 感染する可能性があるウイルス性 の病気です。人から人への感染は しません。これらの感染症を媒介 する蚊には2種類あり、一つは現在 メキシコのほぼ全域で存在が確認 されている「ネッタイシマカ」、も う一つはハリスコやグアナフアト を含めた16州に存在する「ヤブカ」 です。

症状としては、3種類とも共通する ものとして、発熱や頭痛、筋肉痛、 発疹があげられます。ジカ熱は結 膜炎の症状が現れることがあるほ か、デング熱は目の痛み、チクング ニヤ熱は吐き気とウイルスによっ て、症状に違いがある場合もあり ます。 また、チクングニヤ熱を発症した 際に骨が張り裂けるような痛み( 関節痛)を伴うことがあるなど、同 じ症状でもウイルスにより程度が 異なることもあります。

蚊に刺されてから症状が出るまで、その潜伏期間は3つのウイルス ともに10日間ほどかかり、かつ病 院で検査を経て診断結果がでる のにさらに7日間かかります。驚く べきことに一匹の蚊が3種類のウイルスを媒介する可能性もあり、1 匹蚊がいるだけで様々な感染症に かかることもあります。そのためフ ァティマ医師は、「自分でただの風 邪だと判断することはなく、病院 を受診してほしい」と主張していま す。グアナファト州は、3種類のウ イルスの検査を同時にできる数少 ない州のため、迅速な対応するこ とができるということです。 特に雨が多く、温かいこの時期 は、蚊が発生しやすいので注意が 必要です。蚊は、薄暗い時間帯を 好んで活動します。具体的には午 前6時から8時まで、午後5時から7 時まです。ただ、蚊が家の中に入り 込んだ場合、「上記の時間以外で も血を吸う可能性があります」と 指摘しています。

〇ジカ熱の感染例 グアナファト州 ではなし

小頭症との関係が疑われるジカ熱 ですが、保健省が2015年から今年 までに行った調査によると、メキ シコでは、このウイルスに感染した 患者は25,000人に上っています。 その中では、40人が小頭症を患っ た乳児を出産したと報告されてい ます。ただ、幸いなことに、グアナ フアト州では、現在までにジカ熱 の感染例はありません。

〇 卵は水なしでも1年間生存

これらの感染症を防ぐために、グ アナファト州保健省では、卵の孵 化させない取り組みを大々的に実 施しています。実は、蚊が卵から孵 り、成虫になるまでの期間は、お よそ1か月ととても短いです。その ため、まずは卵を増やさないこと に注力するのが、予防法として最 も重要なのです。 雌の蚊は、庭などに放置されたバ ケツなどの、水をためやすく、卵を 産み付けやすいものに好んで産卵 します。卵は、驚異的な生命力を 持っており、たとえ卵がある環境 において水がなくなったとしても、 そのまま1年以上生き延びること か可能で、水を得さえすれば、その まま孵化できます。雌の蚊は1回の 産卵で50から200もの卵を産卵し ます。卵の大きさは1ミリメートル 以下で、肉眼で確認できません。

〇ビールのふたなど ちょっとした 水場を徹底的に排除

それでは、強力な生命力を持つ蚊 を避けるには、どうすればいいの でしょうか。まずは溜水のないよう に家の周りを整理して、清潔に保 つことが必要です。例えば中庭に 放置されたバケツやタイヤから、 ビール瓶の蓋のような小さなもの まで、ほんの少しでも水が溜まる ような場所は蚊の幼虫の巣になり えます。バケツのようなものはひっ くり返して、水の入る隙を与えない ことなど、ちょっとした工夫が蚊の 発生を防ぐのです。また、木のくぼ みや大きい葉っぱにできたくぼみ なども、注意しましょう。

〇蚊の採集のための家庭訪問 グ アナファト州の取り組みにご協力を

グアナファト州保健省では、成虫 の蚊の駆除についても、取り組み を強化しています。主に2つの駆 除活動を行っており、トラックで霧 状の駆除剤を街中に散布していく というもの。 そして、予め決めておいた地区の 各家庭を訪問して直接駆除剤を散 布し、また、小さなバケツのような 罠や吸引機などを用いて蚊を採集 し、ウイルスを持っていないかチェ ックするといった生態調査です。 しかし、このような各家庭への訪 問調査は、まだ認知度が少なく住民の留守等で協力が得られないな ど、対象としている全家庭を訪問 できないないということです。

アル マ医師は、「調査員は、図1のよう なIDカードを持っています。日本人 の家庭にも訪問することもありま すので、ぜひご協力を」と訴えてい ます。また、他のスタッフとの連携 を取るため、各家の壁に、図2のよ うなサインを残していくということ です。そのため、「落書きだと思わ ず、消さないでほしい」と話してい ます。

第2部では、レオン市の日系クリニ ック「コスモスファミリークリニッ ク」が、「破傷風とワクチン接種」 をテーマに、同クリニックのマリア 先生が登壇しました。 破傷風は、傷口から破傷風菌が入 ることで、全身の筋肉を緊張・硬 直させる病気です。その症状につ いて、「休むことなく24時間激しい運動を続けるような疲労感」だと 表現しています。重症になると、最 悪の場合呼吸困難に陥る可能性 があると警鐘を鳴らしています。

日本ではまれな病気ですが、メキ シコでは残念ながら現在の衛生状 況からまだまだ注意が必要だと説 明しており、「誰にでもかかりうる 病気で、ちょっとした傷でもアルコ ールなどで消毒してほしい」と訴え ています。 そして、この破傷風の予防法とし ては、ワクチン接種が推奨されて います。日本では、4種混合ワクチ ンとして乳児期に接種している人 が多いものの、10年以上たつと その効果がなくなるということで す。 そのため、「多くの人は抗体を 持っていないことから、予防接種 の記録を確認し10年に1度の接種 を」と話しています。

 

 

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