メキシコの美食、職人の技をご紹介する「Mexico新聞セレクション」

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ベロニカ・プラソラ Mexico新聞編集長

「美食の国・日本」これは私たちメキシコ人、そして全世界の人々が同意できる皆さんの母国・日本の印象です。豊かな四季や大自然、それと寄り添う人々、そして大自然からの恩恵を十二分に楽しむことできる技と伝承。私は日本を訪れるたびに日本人と日本の食文化の深い関係を目の当たりにして、心地よさとともに、一種の嫉妬なんでしょうか、ちょっとしたほろ苦さ、そんな気持ちを感じていました。

 

ひるがえってわれらが祖国・メキシコ。私たちだって世界中に認められた豊かな食文化を有していると胸を張って言えます。土着の古くからの食文化と移民で持ち込まれた新しい食文化の融合とでも言いますでしょうか、この独特の食文化はメキシコにしかない、はっきり断言できると思います。

 

「私たちの食文化の深さと広さをもっと皆さんにもっと触れ合っていただきたい」

 

Mexico新聞創刊から温めていた私の希望が今回から実現することができました。

 

そしてこの企画を支えるのは、われらがMexico新聞を支えるグッドフェローズたち。日々のMexico新聞の記事を寄稿していただいている、その道の探究者、ちょっとこだわり症、一言モノ申すのが好きな仲間たちです。

 

 Humberto Gómez ウンベルト・ゴメス

 

金融のエキスパート。皆様がよくご存じのBanamexでの業務経歴を生かし、経済、金融、マーケティングに精通し、Mexico新聞のビジネス・経済関連の記事を担当する。彼のモットは「メキシコ的完璧さ」。冠の「メキシコ的」が気になりますが、彼の人生でグルメは最大関心事。現在のマイブームはカクテルの作り方とのこと。

 Rogelio Zárateロヘリオ・サラテ

 

ローテク揃いのMexico新聞で、唯一デジタルを武器にするコンピューターマニア。

 

コーヒーをこよなく愛する傍ら、無限にあふれるネットの情報からMexico新聞読者のために厳選情報を集めている。そんな彼は、ワインと旅行、そして世界中での人々との出会いを最も楽しみにしているローテクマニアでもある。

 

 Dulce Vegaドュルセ・ベガ

 

そのかわいらしい見た目からは想像できないほどのパワーで「食の世界」を駆け巡る。

 

「Food and Travel」などへのグルメ・旅行の執筆を通じて、彼女が考える新たなライフスタイルについて伝導している。そして、彼女が最も情熱を注ぐのはワイン醸造、そして、歴史、社会、文化そして愛を感じることができる食文化。一方で、アイスクリームラバーとして、アイスは食卓に咲く華だと思っている。

 

 Gisela Gonzalez Narváez ヒセラ・ゴンザレス・ナバレス

 

情熱や衝動で動きがちなMexico新聞のなかで、データ分析や戦略立案、プロジェクト管理を専門とするプロジェクトスペシャリスト。クリーンエネルギー、国際ロジスティクス、国際マーケティング、組織発展、経済プロジェクトを得意とする。メキシコの有名企業のコンサルティングサポートをこなす傍ら、グアナファト州のすばらしさを人々に伝える観光コーディネーターとしても活躍する。もちろん食への愛情の深さは計り知れない。

 

Mexico新聞セレクションは、この力強い、かけがえのない仲間たちとともにメキシコ中をくまなくリサーチして、環境・歴史・文化・流行などあらゆる角度からご紹介するものになっています。これは日本人の皆様へのメキシコのすばらしさの一片をご紹介するということだけではなく、私たちメキシコ人が再度、食文化を通じて自国のすばらしさや価値を再確認するプロジェクトでもあるのです。

 

第1弾:ヤギのチーズ【Quesos Oly】

 

アパセオ・エル・グランデにある伝統的チーズ工房でみたメキシコ・チーズ文化

 

皆さんはメキシコとチーズという言葉がイメージとしてつながりますか。

 

観光や短期滞在でメキシコにいらっしゃる方たちはたぶん、メキシコがチーズ大国であることを感じないのではないでしょうか。そうなんです、私たちメキシコ人は本当にチーズが大好きで、様々な種類のチーズを、大工場から家族経営の工房まで様々な環境で生産して、そして様々な調理方法でメキシコ人の食卓を華やかに彩っています。本場ヨーロッパになんか負けないくらいの種類と製法を誇っています。

 

Mexico新聞セレクション、第一弾はヤギのチーズです。

 

Quesos Olyは、グアナファト州、アパセオ・エル・グランデにある、ヤギのチーズ専門のメーカーです。私たちMexico新聞と彼らの出会いはとても偶然的なものでした。しかし、彼らの工房へ行って直接見て、お話を聞かせてもらい、そして自慢のチーズたちを口の中に入れた瞬間、「これが私たちのスタートだ!」という結論に至りました。

 

「子供のころ食べた、あのヤギチーズをまた食べてみたい」

 

オーナーであるオリベロスさんと妻のドーニャさんが1990年からスタートさせたこのチーズメーカーは、フランス仕込みのこだわりの製法で出来上がるチーズの品質は極上であり、Mexico新聞セレクションのメンバーも唸るほどのおいしさです。また、地域のヤギ酪農産業をけん引する、まとめ役としても彼らは地域コミュニティーにとって非常に大きな役割を果たしています。

 

Mexico新聞のグッドフェローたちは、このQuesosOlyに関して以下の寄稿を寄せています。

 

私の考えるQuesosOlyの特徴:ロヘリオ・サラテ

 

まず一つ目は、徹底した品質維持のための技術と努力です。チーズの味や香りでもっと重要な成分は油分。彼らは自分たちの製品の最終的な味と香りの表現を完璧に理解し、各農家から集めたミルクの油分のばらつきを正確にコントロールしています。二つ目は、1つ目に関連し、最高のチーズをつくるために最適のヤギの品種厳選と個体ごとの血統の管理。自社の努力を惜しまないことは当然でありますが、理想とするチーズのための搾乳対象の徹底的な血統管理まで行っていることは驚きでした。そして三つ目は、日本の皆様には当たり前のことかもしれませんが、メキシコ国内の中小レベルの食品工場では珍しいほどの衛生管理体制と従業員の意識の高さ。味も重要であるが、清潔・安心感は僕にとっては最も重要なポイント。ここの製品は安心して楽しめると感じています。

 

QuesosOlyが作り出す地域の夢:ヒセラ・ゴンザレス・ナバレス

 

今回ご紹介する「Quesos Oly」は、その製品の品質やストーリーもさることながら、地域での役割がユニークであり、皆さんが彼らのチーズを口に入れた際に、思い出していただければ、感慨深いものとなります。

 

「Quesos Oly」は、前記もしていますが、小さな工房からスタートし、今では100以上の近隣酪農家を育て上げ、そこから原料のヤギのミルクを集めており、現在では毎日1万リットル分の乳からチーズを生産するまでに成長しています。しかし、この地域で安定的な生産ができて、品質を管理できる酪農家を育てるのは容易なことではなかったのです。

 

「1980年からこのヤギの酪農の世界に入りました。そしてこの地域でのやぎ酪農の可能性を信じて、チーズ工場を拡大するとともに、他の酪農家とアパセオ・ヤギ酪農家協会を立ち上げました。そこでは、ヤギの血統や品質を維持管理するプログラムを構築して、この地域のやぎ酪農の品質向上に努めています。」と創設者のオリベロスさんは語ってくれます。

 

また、オリベロスさんの妹さんであるアレハンドラさんは「どれだけ少ない生産量だろうが、必ず支援する酪農家から原料を購入しています。私たちが安定した売り先であり続けることが、結果的には作り手の安定的な生産を促し、品質が安定した原料調達が可能となります。また、そのように集めたミルクは、一定の濃度になるように調整、そしてph検査などの調査を毎回行って安定した品質の商品づくりを行っています。原料の供給先、原料の調整、そして検査と当たり前のようなことですが、品質保持をするための日々の決め事を大切にしています。」とその苦労を語ってくれました。

 

そして「Quesos Oly」の自社工場や畜舎では近隣の女性を積極的に雇用しています。「この地域の男性は、隣国への出稼ぎや近隣自動車工場で働いている人が多く、一方、女性や高齢者の安定的な収入を得られる雇用先が少なかったのです。ですので、弊社はそのような女性の受け皿として、食品技術者として意識と知識を習得させています。自分たちの仕事に誇りをもってやっていただくことで、結果的には製品の品質向上、収益率の向上、新規顧客の獲得が実現しました。また、興味深いことに、働く女性の子供たちは、学校から母親たちいるこの工場へよく来ています。そして、真摯な仕事ぶりの母親たちの姿から見ながら育ち、将来の夢は酪農家やチーズ職人なんて子供がいるまでになりました。」とアレハンドラさんは述べています。

 

この小さな工房からスタートした夢は、今では地域の支えになって、子供たちの夢まで担っているのです。

 

世界の主流になるヤギ酪農:ウンベルト・ゴメス

 

私はこのQuesosOlyについて、ヤギ酪農という現在注目されている新しい産業体制として注目しました。

 

現在メキシコでは、およそ870万頭のヤギが飼育されています。その中から、16万7千トンのミルク(世界の1.1%に相当)、4万8千トンの肉(0.89%に相当)を生産しています。そして特筆すべきこととして、メキシコでのヤギの酪農は、メキシコ国土の60%に相当する砂漠地帯や半砂漠地帯で盛んにおこなわれているのです。プエブラ、オアハカ、サンルイスポトシ、ゲレロ、コアウイア、サカテカス、グアナファト、ミチョアカンが主な産地と言われています。

 

現在のところ、ヤギの酪農は農村部の貧困地帯で行われています。ただ、そのうちSIAPSAGARPAによると、自給自足のためにヤギ酪農をしているのは80%にまでになると述べています。要は生きるため、食べるためにヤギを飼っているということです。しかし、半砂漠地帯において、ヤギから得られる現金収入は乏しいものですが、酪農家たちが生産を強めており、今では、ラグーナ地域(コアウイア州とドゥランゴ州)、およびバヒオ地域においては、改善されてきています。

 

一方、OECDによると、2024年までに世界における動物性たんぱく質への需要が経済発展に伴い爆発的に増加し、メキシコのように現在発展段階にある国では約23%の増加が見込まれています。そのような状況下で砂漠や半砂漠で行われているヤギ酪農は、世界的にも非常に注目されているのです。将来的にはメキシコがヤギの酪農大国へと発展していく可能性も非常に高いといえます。

 

私はこのヤギチーズを楽しみながら、世界のヤギ酪農の可能性を感じながら味わってみたのです。

 

Mexico新聞グッドフェローたちは少々小難しいことを言っていますが、最も重要なチーズの味や楽しみ方についてドゥルセさんが述べています。

 

QuesosOlyの楽しみ方:ドゥルセ・ヴェガ

 

ビンセント・フォックス政権下の2000年、創設者オリベロスさんは、政府からフランスへの経済開発団の一員に選ばれ、そこでフランスチーズの製造方法について学びました。そこで学んだ技術と知識、また実際の経験からチーズの製造工程を自分なりに見直し、より付加価値のついた精錬された製品を作っています。努力家のチーズ工房、そんな工房の製品の中から、「これは!」という4品についてページ中央でご紹介します。

 

Maduro de cabra y oveja【ヤギと羊の熟成チーズ】

 

名前の通り、ヤギと羊の乳で作った濃厚な熟成タイプのチーズです。

 

まず、非常に柔らかく、口の中で少しずつとろけていきます。そして、かすかな甘みを感じることができます。このチーズは、薄い皮に覆われており、温度、湿度を管理された室内で6か月熟成されています。完成まで、細心の注意を払いながら、毎日1つ1つのチーズを従業員がモニター管理し、菌が均一にチーズ全体に渡るようにコントロールしているということです。この手間のおかげでこんなリッチな味わいのチーズができるのです。

 

Queso Andehe【アンダヘチーズ】

 

Quesos Olyのこだわりと情熱、責任感が感じられる一品です。

マンチェゴチーズと似たプロセスで作られていますが、熟成の期間が15日違います。熟成後、小麦のわらで包み、燻製。そのあとまた8日間再度熟成させます。濃厚な味わいがお好きな人にはぴったりです。

 

 

Port Salud【ポート・サルー】

 

セミハードタイプのチーズで、薄いオレンジ色の皮が特徴です。

 

原産地としてフランスが有名な牛乳で作られるチーズです。Quesos Olyでは、さらに味のしっかりしたヤギのミルクを作るために、リッチな香り楽しめるものになっています。この独特な香りがチーズラバーを魅了するのです。

 

  

Tipo manchego en vino tinto【マンチェゴチーズ・赤ワイン漬け】

 

紫と赤の中間のような色を帯びているのが特徴です。

このチーズは、成形圧縮した後、オークと呼ばれる木でできた棚の上で6か月間、無菌環境下で熟成させます。その後、一か月間の間、メルロー種のワインの中に漬け込むのです。そのためこのチーズを口に入れると、チーズそのものの豊かな味わいと、メルローワインのほのかな風味を楽しむことができます。

 

今回ご紹介したチーズたち。当然、ワインのおともに最適です。でも、私からはメキシカンビールIPA(インデアン・ペールエール)との組み合わせもお勧めします。様々なヤギチーズの味わいと香りを少し苦みのあるIPAとともにいただく、こんな合わせ方もこのチーズにはぴったりと言えます。ぜひお試しください。

メキシコの美食と職人たちの技をご紹介する「Mexico新聞セレクション」

 

Mexico新聞では、われらのグッドフェローたちとメキシコ中の良品や職人たち、素晴らしい食文化を中心にMexico新聞でご紹介していきます。乞うご期待ください。

 

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moshimoshi@2zq.147.myftpupload.com まで

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